はじめに

ファイバーモデルは、実務と研究の両者で広く信頼され、使用されているモデル化手法の1つである。ファイバーモデルでは、断面が複数の微小断面(セグメント)に分割され、それぞれが独立した応力-ひずみ関係を持つ。ファイバーモデルの概要、メリット、デメリット、材端剛塑性ばねモデルとの違いなどは、「ファイバーモデル入門」から参照できる。また、「【構造解析Tips】ファイバーモデル入門~計算理論編~」では断面解析の流れが簡単に紹介されている。

ファイバーモデルにおける分割数

RESP-Dでは、断面力・応力の評価にファイバー断面の対数分割を使用している。対数分割により、歪が大きくなる縁に対して分割を細かくする。一方、中央部では分割数が少ないので、計算負荷が軽減される。分割数はデフォルトでは9分割となっている。今回は分割数を増減させてパラメトリックスタディを行い、ファイバー断面の分割数に対す精度を検討した。

図1 RC矩形断面(デフォルト分割数「9分割数の場合」)

対象モデル概要

解析対象モデル概要を図1に、断面諸元を図2に示す。境界条件は、下部(Node1)は固定、上部(Node2)は自由とした。 荷重条件は,節点2の位置に水平力(X方向)を静的増分解析として作用させることとした。

図2 解析対象モデル

 

1 部材断面諸元

鉄筋の詳細
主筋:SD345
HOOP筋:SD295A
コンクリート:Fc24
dt:75mm

 

パラメトリックスタディ

ファイバー断面モデルのデフォルトの分割数は9に設定されている。パラメトリックスタディでは、以下の分割数を検討した。増分解析では、節点2の位置にX方向の水平力を加えた。限界変形角は1/20とした。

表 2 分割数

ケース番号 分割数
1 6
2 9
3 18
4 27

 

結果

ファイバー断面分割数を変化させたRC柱脚のモーメントー曲率を図3に示す。鉄筋降伏時点、全断面降伏時点の目安も示している。

3 モーメントー曲率

弾性領域内(降伏する前)では、分割数は曲げ挙動に影響が小さい。しかし、塑性域では若干の違いが見られた。

鉄筋が降伏した時の荷重で観察される変形を表3に示す。理論上、最も精度の高い解析ケースは、分割数が多いものになる。そう考えると、解析ケースの中で最も精度の高い27分割を100%とした場合の、他の全てのケースの相対精度は表3のようになる。

表 3 鉄筋降伏時の変形

解析ケース 分割数 鉄筋降伏時の変形(m) %精度
1 6 0.02637 99.6
2 9 0.02670 98.9
3 18 0.02650 99.8
4 27 0.02647 100.0

6分割の方が9分割よりも精度が高い結果となっている。その原因として考えられる多くの要因の中には、次のようなものがある。

  1. 解析の小数切り捨て
  2. 分割数の影響
    • 分割が粗いほうが剛性が変化するタイミングは遅くなるものの、剛性変化後は急激に剛性低下しやすくなるような関係があると思われるので、些細な差なら大小関係が逆転しても不思議ではないように考えられる。

鉄筋降伏時の場合、数値の差はほとんどないように見える。そのため,値の差が比較的大きい全断面降伏時の変形を考慮した。

表4は,すべての解析ケースについて,図3に示すように、全断面が降伏した時の荷重で観測された変形をまとめたものである。

表 4 全断面降伏時の変形

解析ケース 分割数 全断面降伏の変形(m) %精度
1 6 0.0448 82.5
2 9 0.0395 96.2
3 18 0.0380 99.7
4 27 0.0381 100.0

デフォルトの分割数での解析ケースの相対精度は約97%である。この結果より、デフォルトの9分割数の精度は問題ないと考えらる。分割数を減らすと相対精度は低下する傾向にあり、分割数を6に設定した場合は82%まで低下した。

 

まとめ

本検討により得られた知見を以下に示す。

  • ファイバー断面モデル分割数を変化させたRC柱モデルを検討した。
  • 検討した条件下においては、
    • 全断面降伏時点では分割数をデフォルトの9分割数から減らすと精度の低下が見られた。一方、分割数を2倍、3倍と増やしても影響は小さい。
    • 鉄筋降伏時点では差がほとんどないことが確認された。

課題

今後は以下の課題について調査していく必要がある。

  • 多様な断面・配筋状況における検証
  • 動的な履歴特性に対する検証

 

参考文献

  1. 解析雑誌 Vol.21 2008.12 【Technical Reports 】: RC架構の柱軸力変動を考慮するためのファイバモデルの開発と評価
  2. RESP技術ブログ:【構造解析TIPSファイバーモデル入門
  3. RESP技術ブログ:【構造解析Tips】ファイバーモデル入門~計算理論編~
  4. RESP技術ブログ:【構造解析TIPS】材端剛塑性ばねモデルと適合する RC 部材のファイバーモデル化に関する検討 

     

     

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