はじめに

構造解析では、固有周期やベースシアといった指標がいくつも出てきます。
指標に対する理解は、「指標をどう求めるか」, 「指標をどう使うか」をそれぞれ知ることで達成されるものだと考えています。
私は、「固有周期にはなじみが深くなったけれど、ベースシアについてはどう使うかを理解できていないまま」の期間がしばらく続きました。
今回は、ベースシアをどう使うのかを理解することができた業務について、ざっくりとお話しできればと思います。
※ベースシアとは、最下層のせん断力のことで、ベースシアを建物総重量で除すと、ベースシア係数(単位は無次元)となります。
なお、人によってはこの記事で書いているベースシア係数のことをベースシアということがあるようですので、注意が必要です。

固有周期の次に把握しておきたい指標、ベースシア

動的解析業務を行うと、まず先輩から「固有周期いくつ?」と必ず聞かれます。
なぜなら、建物の固有周期と合わせて地震波の加速度応答スペクトルを眺めることで、卓越する地震波を予測したり、補強の方向性(硬くするのか、柔らかくするのか)を決めたりするからです。
そして振動解析実行後に、「ベースシアいくつ?」「実効周期いくつ?」と聞かれることが多いです。
はじめは、ベースシア(最下層の最大応答せん断力)と実効周期(建物塑性化後の周期)???という感じで、なぜ解析初期の段階で先輩がこれらの値を知りたいのかが全くわかりませんでした。

動的解析結果の妥当性確認と、静的解析のベースシア係数の目安との比較に使う

動的解析で得られたベースシアを把握したい理由は、以下の2つになります。
①加速度応答スペクトルとの比較により、動的解析結果の妥当性確認を行うため。
②動的解析で得られたベースシア係数が、標準層せん断力係数Coを用いた指標と比較してどうかを把握するため。

まず①について説明します。
地震波の加速度応答スペクトルと建物周期から、1質点系の最大応答加速度を予測することができますが、これを重力加速度で除すと水平震度(単位は無次元)となります。
低層建物などのように1次モードが支配的な場合は、加速度応答スペクトルから求めた水平震度と、振動解析で得られたベースシア係数がおおむね一致するはずですので、
「応答スペクトルから予測される水平震度と、振動解析で得られたベースシア係数がどの程度合っているのかを比較し、結果の妥当性を判断する」ことができます。
ただし、建物が塑性化する場合は、以下の点に注意が必要です。
・最大応答加速度の推定において、弾性固有周期ではなく建物塑性化後の実効周期を用いる(実効周期については後述します)。
・瞬間剛性比例減衰で減衰評価を行う場合、応答スペクトルの減衰評価と乖離が生じる。

次に②について説明します。
静的解析では、標準層せん断力係数Co(意味的にはベースシア係数と同じ)を用いてまず仮定断面を決めることが一般的です。
静的一次設計であればCo=0.2, 静的二次設計であればCo=1.0を与えることが多いので、
振動解析を行った地震波がL1相当であれば、振動解析で得られたベースシア係数がCo=0.2と比較してどうか、
L2相当の地震波であれば、振動解析で得られたベースシア係数が最下層のQun/ΣW、すなわちDs×Fes×Co(Co=1.0)と比較してどうかを把握することは、振動解析結果を把握する上で有意となります。
※ここで、Qun:必要保有水平耐力(=Ds×Fes×Qud), Ds:構造特性係数, Fes:形状係数, Qud:Co=1.0のときの層せん断力です。

補足(実効周期とは?)

実効周期とは、建物塑性化後の周期のことです。
実効周期の簡易的な計測方法として、「地震波のピークを過ぎた後に自由振動している建物頂部の変位時刻歴を出力し、その変位時刻歴波形から自由振動の周期を(フーリエ変換または目視によって)読み取る」という方法を業務で用いました。

まとめ

振動解析初期の段階で、先輩に「ベースシアいくつ?」と聞かれた理由は、以下であることがわかりました。
①加速度応答スペクトルとの比較により、動的解析結果の妥当性確認を行うため(加速度応答スペクトルの縦軸は、1質点系のベースシア係数に置き換えることができる)。
②動的解析で得られたベースシア係数が、標準層せん断力係数Coを用いた指標と比較してどうかを把握するため。

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