Q: 立体振動解析で特定の層のみ層塑性率が異常に大きい値となります。

A:

立体振動解析における「層塑性率」の位置付け

立体振動解析では層塑性率よりも部材の塑性率を見ることが一般的であり、層塑性率はあくまで参考値という位置づけになります。これは「立体振動解析の層塑性率」という概念に対して明確な計算方法が確立されていないためです。そのため、RESP-Dでは独自の考え方に基づき「立体振動解析の層塑性率」を出力しております。したがって、「質点系振動解析で求められる層塑性率」と「RESP-Dで立体振動解析時に出力される層塑性率」とは違う意味を表すことになり、「質点系振動解析で求められる層塑性率」の結果と比較して「RESP-Dで立体振動解析時に出力される層塑性率」の結果が感覚的に合わない大きな値を示す場合があります。

立体振動解析における「層塑性率」の計算方法と異常値の原因

RESP-Dの立体振動解析では、層内のいずれかの部材の塑性率が1を超えた時点での層間変位を塑性率基点層間変位とし、「最大層間変位/基点層間変位」として層塑性率を求めています。(ただし層塑性率が1以上の場合。)そのため、層内に早期に降伏判定される部材が存在すると小さな層間変位が層塑性率基点層間変位として認識されてしまい、層塑性率が異常に大きくなる場合があります。

立体振動解析における「層塑性率」のまとめ

立体振動解析では「層の骨格曲線」が存在しないため、層塑性率を上記のような方法で求めています。一方で、上記方法による塑性率基点の設定方法による層塑性率基点は、質点系モデルの骨格曲線から定められる層塑性率基点と比較してしばしば過剰に小さくなります。そのため、たとえ上記のように異常に大きな値となっていても、それがモデルや計算の不備・不具合を意味したものであるとは限りません。
どうしても立体振動解析による層塑性率の数値を用いて検討を行う必要がある場合には、設計者判断で塑性率基点となる層間変位を定め、最大層間変位で除して算出するなどの工夫が必要です。

以下に立体振動解析解析で層塑性率が大きくでてしまう状況をいくつか紹介します。

立体振動解析で「層塑性率」が大きくなるのはこんな時

  • 層内に断面の小さな部材が存在する

同様の配置をされている他の部材と比較して、断面が大幅に小さい部材は早期に降伏してしまう可能性があります。

  • 長期軸力によって降伏寸前の部材が存在する
    長期荷重で降伏寸前の部材が存在する場合、早期に降伏判定がなされてしまいます。長期で降伏しているか、降伏寸前かの確認は長期の検定結果より確認できます。
    別記事にて紹介していますので、ぜひご覧ください。
    【RESP-D Q&A】反復計算エラー

  • 早期に降伏することを計画している部材が存在する
    制振ブレースなどの制振部材は意図して主架構よりも早く降伏させるため、小さい層間変位が塑性率基点になってしまうことがあります。

  • ファイバーモデルの塑性率計算方法が「塑性率基点歪みを設定」になっている。(デフォルトの設定)
    直接の原因とならないことも多いですが、塑性率が大きくなる場合にしばしばチェックする項目ですので、ご紹介します。
    RESP-Dでは柱はすべてファイバーモデルでモデル化されており、デフォルトの設定では縁歪が規定の値を超えた時が塑性率基点と判断されます。
    二軸曲げなどが作用し、断面端部一部のセグメントのみが規定の値を超える場合など、ファイバーモデル全体としては健全とみなせる場合で降伏判定されてしまう場合があります。

その場合は、ファイバーモデルの塑性率計算方法が「重み付け平均塑性率」に変更してください。この方法は断面全体の剛性に対する各セグメントの寄与度を評価し、それを基に塑性率基点を定める方法です。
「ファイバーモデル」って何??という方は、別記事「ファイバーモデル入門」でファイバーモデル概要を紹介しています。ぜひご覧ください。

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