構造解析プログラムって、何をしている?

現代の構造設計業務には、構造計算プログラムが欠かせません。 かつては手計算により構造計算を行って設計していた時代もありましたが、いまでは構造計算プログラムを用いることが当たり前です。 構造計算プログラムは非常に便利で、画面上で部材の配置や断面の定義を行えば、自然に構造物に生じる力が計算されます。 あまりにも意識せずとも必要な計算ができてしまうので、構造計算に取り組んで間もない若手技術者の中には、実際にどういった計算が行われているのかよくわからずにいる方もいるのではないでしょうか。 そこで、構造計算プログラムを作る側の人間として、構造計算プログラムが一体何をやっているのか、何回かにわけてかみ砕いて解説していきたいと思います。

構造計算プログラムによる処理の流れ

構造計算プログラムは、主に以下のような入力データを必要とします。
  • 節点(各部材の交点となる位置)の配置
  • 部材の材料
  • 部材の断面
  • 部材(柱、梁、壁、ブレース、小梁)の配置
  • 荷重の配置
  • その他計算条件
これらの情報を用いて、以下のような流れで処理を行います。
  1. 架構認識(節点、部材の配置と断面の関係を把握する)
  2. 断面性能計算(断面情報をもとに、各部材の剛性や耐力を計算する)
  3. 荷重計算(配置された部材の自重や、荷重の情報などから構造物に作用する力を計算する)
  4. 応力解析(構造解析用のモデルを作り、力を作用させたときの変形・応力を求める)
  5. 断面検定(応力解析結果をもとに、部材断面の保有性能が十分かどうか確認する)
  6. 計算書出力(計算結果をレポートとしてまとめて出力する)
プログラムによっては上記の一部分、例えば応力解析のみを行うようなプログラムもあれば、これらすべてを扱うようないわゆる「一貫構造計算プログラム」と呼ばれるものもあります。 私たちの販売している製品である「RESP-D」はいわゆる「一貫構造計算プログラム」ではありませんが、上記の流れはすべて行いますので、ここから先はRESP-Dを例にとって説明していきたいと思います。

架構の認識って具体的に何をやってる?

実際の処理で行っていることは多岐にわたりますが、基本的には幾何的な情報から必要な計算を行う処理となります。 以下で挙げるもの以外にもたくさんのことをやっていますが、イメージを掴むために代表的な処理についていくつか例を挙げて説明します。

意匠階高と構造階高の関係を認識する

通常、階高というと意匠階高を示しており、下の階の床上から上の階の床上までの高さとして寸法線が引かれます。 一方で構造解析モデルでは柱梁は線材として取り扱うため、部材の心(図心)の位置で座標を取ることになります。この高さ方向座標のズレを適切に解釈して解析モデルを作る必要があります。 つまり、梁上から梁の中心までの高さの分構造階高と意匠階高にズレが生じることになりますが、各階で梁せいが同じとは限りません。そこで、一般的には、代表的な梁を決めてその梁せいをベースにして構造階高を定めたりします。 具体的には、例えば1階の構造階高は以下のような計算で求めます。 (1階の構造階高)=(1階の意匠階高)+(1FLの代表梁せい)/2-(2FLの代表梁せい)/2 なお、RESP-Dも含む多くの構造計算プログラムでは、床上から構造心までの距離を指定することで、自動的に意匠階高と構造階高の差を計算してくれる機能を有しています。 このような関係性を用いて構造解析モデルの座標を決定するため、意匠用としての座標と構造解析モデルでの座標には差異があることに注意が必要です。

部材間の関係性を認識する

一般的に柱・梁は曲げモーメントを受けた場合に端部のモーメントが大きくなるため、端部から損傷が進行します。このとき、柱梁接合部の内側で損傷が生じることは通常は考えにくく、柱でしたら梁の際、梁でしたら柱の際の部分から損傷が生じることになります。モデル入力により柱梁の接続関係はわかりますが、際がどこになるかというのは断面情報と照らし合わせるまでわかりません。このように、実際に断面を各部材に当てはめて、幾何学的な形状から際の位置(フェイス位置、危険断面位置とよびます)を算出するのも、「架構認識」の役割です。

壁開口によるフレーム内雑壁を認識する

壁に開口があり、耐震壁としての要件を満たさない場合、壁はフレーム内雑壁として柱梁の剛性・耐力や剛域、フェイス位置に考慮されます。複雑な開口がある場合に開口の位置と部材の位置関係からフレーム内雑壁の寸法を計算するのも、架構認識で行われる処理です。 柱梁の剛域や危険断面位置は解析モデルにとって必要なパラメータですが、これらの値を電卓をいちいち叩かなくても自動的に算出してくれるのが、構造計算プログラムの便利なところです。反面、しっかり確認しないと意図しない解析モデルとなってしまうこともあるため、自動計算された結果はしっかり確認し、工学的に判断して部分的には直接補正するなど注意が必要です。

解析モデル用の節点を生成する

たとえばK型ブレースを配置する場合、解析モデルとしては2つのブレースの交点となる位置では、大梁を分割して接続する必要があります。ただし、ブレースはK型ではなくX型にするかもしれませんし、そのために中間に節点を設けて梁を再接続したりすると非効率的です。 その他にも、片持梁を配置したいときには節点を設けて2点間に部材配置して、というよりも、「90度方向に長さ1.2mの片持梁を配置する」という方が直感的です。 このように、直感的な入力から必要な解析モデルを作成するための内部節点の生成も行っています。
K型ブレースの配置
片持梁の配置

形状に関するエラーをチェックする

形状に関する矛盾をチェックするのも架構認識により行われる処理です。たとえば、床や壁が平面を形成していないと適切なモデル化ができませんのでエラーとして示してあげるなどが代表的な判定です。

まとめ

今回は構造計算プログラムが行っている処理のうち最も最初に行われる、「架構認識」について解説しました。 次回は「準備計算」について説明します。

今回使用したソフト

時刻歴応答解析による設計を支援する統合構造計算プログラム
詳しくは以下のリンクから。 https://www4.kke.co.jp/resp/product/resp-d/new_page.md.html

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