千葉県北西部を震源とし最大震度5強を記録した表題の地震に関して、KKEが所有する三次元免震建物(東京都杉並区阿佐ヶ谷南:下写真参照、建設当時のニュースリリース:https://www.kke.co.jp/news/pdf/2007/NewsRelease_3d.pdf)において観測記録が得られましたので報告いたします。

建物の概要は前回の観測速報記事をご覧ください。

観測速報:三次元免震建物における福島県沖地震(2021年2月13日23時7分頃に発生)

代表的な水平方向の観測波として、Y(南北)方向の加速度観測波を上からRF・1F・B1Fの順に示します。免震階下端であるB1Fでは最大で44.82 [cm/s/s]である地震波が、免震階上端では最大で19.67 [cm/s/s]に小さくなっています。

鉛直方向の加速度観測波を、水平方向と同様に上からRF・1F・B1Fの順に示します。免震階下端であるB1Fでは最大で8.82 [cm/s/s]である地震波が、免震階上端では最大で7.44 [cm/s/s]に小さくなっています。

観測した加速度波形をトリファナック法によって積分して絶対変位波形を求めて、平面オービット図を作成しました(下図)。

前回と同様に免震装置の水平変形を考えます。上記の変位時刻歴と、別に設置されている変位計で直接観測した変位時刻歴を比較してみました(下図)。EW方向では基線のずれが見れますが、加速度を積分した結果と変形の値が良く一致しています。NS方向では基線のずれだけでなく最大変位にもズレが見られます。最大値がずれる原因として、トリファナック法による積分は高周波数のデータにフィルターがかかり補足できなかったことが原因と考えられます。

 

観測波の周波数特性を見るために、上記加速度波形の加速度応答スペクトル(減衰定数h=5%)を作成しました(上図:水平、下図:鉛直)。なお、本建物の耐震設計モデルによる1次固有周期は、水平方向が約3.0 (s)、鉛直方向が約1.3 (s)です。
水平方向では、約1.2 (s)より短周期となる領域では大幅に加速度が低減できており、免震の効果が明確に表れていると考えられます。

 

一方で、下図の鉛直方向では、入力レベルが小さ過ぎて明確な免震装置の影響は見られませんでした。

前回の観測速報(福島県沖地震)よりも地震の規模は小さかったですが、震源に近かったので前回と比べて大きな観測波を記録しました。

気象庁のデータで杉並区は長周期地震動階級1であったと発表があり、長周期地震動の影響が心配されましたが、絶対速度応答スペクトルが基準値の5[cm/s]を超えたのが1秒台であり、設計モデルの1次固有周期からは離れていたので応答変位は前回と比べて特別に大きくはなかったという印象を受けました。

本報告は深い考察ができておりませんが、速報としてお伝えいたします。

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