なんだろう…この節点?

構造解析プログラムが節点を定義しなければならないことくらい、流石に私でもわかります。
節点から部材が作られ、節点で力の釣合いを解くからです。
私はこれまで、部材端部の位置にのみ節点があればいいと思っていたのですが、RESP-Dで生成された入力ファイルを見ると、部材端部の位置以外に節点が形成されており、そこに疑問を感じていました。
以下は実際にRESP-Dで生成された、2層1×1スパンモデルの入力ファイルです。

それぞれ剛床代表節点, 設計用重心節点, 剛心節点という節点が作られていますが、部材が取り付いているわけではありません。
これらの役割について、わからないところは先輩にききつつ、明らかになったので以下にまとめます。
以降、”層”をフロアレベル, “階”をフロアレベル間の領域という意味で用います。

3種類の節点は、実はどれも”中心”だった!

【①剛床代表節点】
荷重拾いで得られた各層の節点重量の中心です。
剛床仮定を設けた節点は剛床代表節点の従属節点となり、水平方向の並進およびねじれの応答を剛床代表節点の応答で代表させることができるため、振動方程式を解く必要がなくなり、計算時間が短縮されます。

【②設計用重心節点】
各階の軸力中心です。
先ほどの入力ファイルを見ると、階ごとに末尾にLとUがついた2つの節点が作られていることからもわかるように、階に属する節点です。(③剛心節点も同様)
“軸力”中心なので、上層の鉛直荷重の情報が必要で、RESP-Dでは鉛直方向の応力解析により設計用重心節点を求めています。
なぜ”設計用”という言葉がついているのかというと、代表値としての階の応答値(層間変形角など)が採用される点や、偏心率の計算に用いられる”重心”として、RESP-Dでは設計用重心節点を採用しているためです。
この是非については後述します。

【③剛心節点】
各階の柱, 耐震壁, 鉛直ブレースの剛性の中心です。
重心・剛心図の作図や、偏心率の計算に用いられます。
RESP-Dでは、剛心節点を水平荷重時の応力解析により求めています。

黄色本によるところの重心とは?

さて、RESP-Dでは、偏心率の計算に用いられる重心として、②の設計用重心節点、すなわち軸力中心を採用していると書きましたが、これは適切なのでしょうか。
黄色本1)では、偏心率の計算に用いる重心については、本来はせん断力中心とすべきであるが、略算的に軸力中心としてもよいとの記載があります。(文献1, p.334~335)

  重心は, 地震時においてその層に作用する層せん断力の合力点として求めるべきであるが, 略算的には以下に示す方法によることができる
各階において, 鉛直力を支持する柱等の構造耐力上主要な部材に生じる長期荷重による軸力N及びその部材の座標X, Yから計算する。重心の座標をgx, gyとすると,
\begin{equation}
\left \{
\begin{array}{l}
g_{x}=\frac{\Sigma(N・X)}{W} \\
g_{y}=\frac{\Sigma(N・Y)}{W} \\
W=\Sigma N
\end{array}
\right.
\end{equation}
と得られる。ここで, 記号Σは鉛直荷重を支持する柱等についての和をとる。

以上の記載から、黄色本によるところの重心とはせん断力中心のほうが意味的に近いように見受けられましたが、略算的に軸力中心を用いることも可能という記載もあり、あながち間違いとは言えないことがわかりました。
先輩いわく、「せん断力中心は外力分布により変わるため、評価の指標として用いる場合はやや煩雑になってしまうということも、軸力中心を採用している理由のひとつ」とのことでした。

黄色本によるところの層間変形角を評価する点は?

また、RESP-Dでは、代表値としての階の応答値(層間変形角など)が採用される点としても、②の設計用重心節点、すなわち軸力中心を採用していると書きましたが、こちらの是非についてはどうでしょうか。

まず、剛性率を求める際に必要な層間変位についてですが、黄色版の2007年版と2015年版で記述が異なるようです。
2007年版では、せん断力中心の層間変位を用いてもよいとの記載があります。(文献2, p.301)

剛性率は階ごとの変形のしやすさに着目した制限であるので, 剛性率を求める際には, 各階の平均的な剛性として並進架構を想定した数値を採用することを規定している。なお, 剛床仮定が成立する場合は, 剛心位置の層間変位を用いることができる。また, 剛床が成り立たないものについて, 精度よく個々の部材ごとの変形が算出できるような方法(剛性及び耐力を適切に考慮した立体解析)を用いる場合には, 建築物全体の振動特性に着目し, 地震力の作用位置である重心の相対変位を層間変位の数値として採用することも可能である

2015年版では、剛心位置の層間変位を用いてもよいとの記載があります。(文献1, p.337)

剛性率は階ごとの変形のしやすさに着目した制限であるので, 剛性率を求める際には, 各階の平均的な剛性として並進架構(各階が水平力作用時にねじれを生じず, かつ, 構面の水平変形がそれぞれ同一となるような架構をいう)を想定した数値を採用することを規定している。立体解析を行う場合では, このような並進架構を想定した数値と同等に見なせるものとして, 剛心位置の層間変位を用いることができる

現状のRESP-Dでは、剛性率を軸力中心の層間変位から計算していますが、今後は剛心位置の層間変位から計算されるようになる可能性があるとのことでした。

次に、層間変形角のクライテリアの確認を行う場合ですが、最も厳しくなる部材で規定を満たす必要があるとの記載があるため、非剛床でねじれが大きい建物では設計用重心節点の代表値としての層間変形角を見るだけでは不十分であることがわかります。(文献1, p.331~332)

 なお, 剛床とみなせない場合や階にねじれを生じる場合, 階高が位置により異なる場合等では部材ごとに層間変形角も異なる数値となるため, また, 層間変形角の緩和規定の適用が構面ごとに別々に行われ, 1/200や1/120といった制限値が部材ごとに異なる場合も想定されるため, 規定上は全ての鉛直部材について層間変形角を確認することとしているが, 最も条件の厳しい部材が明確である場合や, 階で同一の層間変形角の制限値を採用できる場合などでは, 代表的な部材や構面について計算を行い, 規定への適合を確認すればよい。

非剛床でねじれの大きい建物を対象とする場合でも、RESP-Dでは静的解析の計算書において各鉛直部材の最大層間変形角を表示しており、また指定した箇所の層間変位を計算する機能(層間変位計算設定, 層間変位計算座標設定など)を用意しているため、これらの機能を用いることで、最も条件の厳しい部材の層間変形角を簡単に確認することができます。

まとめ

この記事を書いてみて、中心にもいろいろな中心があるという所感を持ちましたが、剛床でねじれが小さい整形建物ではどの中心で評価するかはほとんど問題とならないため、やや込み入った話を深追いしすぎた感があります。

1)2015年版 建築物の構造関係技術基準解説書
2)2007年版 建築物の構造関係技術基準解説書

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