免震部材の繰り返し依存性考慮機能

RESP-D(Ver 3.6.0.0)より免震部材の繰り返し依存性考慮機能が実装されましたのでご紹介いたします。

目次

免震部材の繰り返し依存性とは

高減衰ゴム系積層ゴム支承(HDR)や鉛プラグ入り積層ゴム支承(LRB)に代表される免震支承材は繰り返し変形を受けることで、内部の高減衰ゴムや鉛プラグの温度が上昇します。このように内部材料温度が上昇すると、支承材の性能が低下する現象が知られており、この現象は一般に繰り返し依存性と呼ばれます。特に長周期地震動を想定する場合は、免震部材が長時間繰り返し大きく変形することが予想されるため、設計ではこの繰り返し依存性を考慮した解析が必要になります。本解析が必要になる場合については国土交通省より提示されています「別紙5-2 免震建築物の繰り返し依存性の検証方法」に詳細が記載されております。よろしければご覧ください。
URL:http://www.mlit.go.jp/common/001113884.pdf

繰り返し依存性を考慮する計算方法

繰り返し依存性を考慮する方法としては、「詳細法」と「簡略法」の2種類が提案されており、RESP-Dではどちらの方法も対応しております。

計算方法を選択する上での注意点

繰り返し依存性の性能評価時に提出する方法としては、「定められた試験結果を取りまとめて技術資料として提出する方法」と「評定書(任意評定)を活用する方法」の2種類があります。このうち評定書に記載されている方法は2018年現在、簡略法による評価方法になります。詳細法については計算そのものは可能ですが、基本的には任意評定の範囲外となりますのでご注意ください。

詳細法による繰り返し依存性の評価法

詳細法は逐次、支承材の性能低下を評価し反映させる方法です。計算式・計算手順はメーカ毎に異なりますが、概ね以下の3ステップを時間ステップごとに実施します。
  1. 免震部材の累積吸収エネルギ量を算出
  2. 1で求めた累積吸収エネルギ量から内部温度を算出
  3. 内部温度を用いて免震部材の性能を更新
RESP-Dでは免震部材性能更新のタイミングは除荷時としています。すなわち、履歴曲線における折り返しの位置において性能の更新を行っています。
折り返し時の累積吸収エネルギ量は下図のように計算されます。従って、履歴面積よりも大きなエネルギ量が累積吸収エネルギ量として見込まれ、履歴面積を累積吸収エネルギ量とする手法よりもやや安全側の結果となります。

簡略法による繰り返し依存性の評価法

簡略法は繰り返し依存性による最終的な性能低下率を算出し、それを特性変動として見込む方法になります。手順を以下に示します。
  1. 繰り返し依存性を考慮しない状態で計算を行う
  2. 1の結果から免震部材の累積吸収エネルギ量を算出する
  3. 2の累積吸収エネルギ量から免震部材の内部温度を求める
  4. 内部温度から免震部材の性能低下の割合を算出する
  5. 4の性能低下割合を特性変動係数として見込み、再度計算を実施する
簡略法の計算では、繰り返し載荷による免震部材の性能低下を見込まない場合の、免震部材の累積吸収エネルギ量を基に繰り返し依存係数を計算します。そのため逐次的に性能低下を見込む詳細法と比較して、免震部材の最終時刻における累積吸収エネルギ量を大きく評価することとなり、性能低下の割合も大きくなります。つまり、詳細法と比較して一般に安全側の評価となります。

RESP-D操作手順

詳細法の実行手順

詳細法の場合は「立体振動解析条件」もしくは「質点系振動解析条件」のいずれかにて「繰り返し依存性を考慮する」にスイッチを入れ、解析を実行してください。

ただし、現状で逐次計算に対応している製品は限られております。詳しくは適用範囲をご覧ください。

簡略法の実行手順

上に示しました計算方法に沿って説明します。
1:繰り返し依存性考慮を「考慮しない」とした状態で解析を実行する 2~4:免震部材の繰り返し依存性係数を算出する。 内部で計算した繰り返し依存係数を出力できます。画面上での確認もしくはCSV出力による確認のいずれも可能です。
RESP-Dが未対応製品の場合、免震部材の最終温度からメーカーごとの算出式に従って計算してください。
  • 画面上での出力例
該当部分を拡大すると、下図のようになります。
  • CSV出力の例
5:免震部材を選択し、免震部材性能プロパティから入力してください。
該当部分の拡大図を下図に示します。入力は符号付きの%入力になりますのでご注意ください。

適用範囲

現状は以下のメーカー製品に対応しています。
高減衰積層ゴム支承:ブリヂストン製品
鉛プラグ入り積層ゴム支承:オイレス工業製品、ブリヂストン製品

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