MN耐力曲線作成時のエラー

業務で大断面のMN耐力曲線が必要になったので、RESP-F3TのAnalysis FiberSection機能を利用して終局MN耐力曲線を求めました。過去の業務で使用されたデータを基にFc21をFc24に変更しftcファイルを作成すると、
「エラー:MN耐力点を求めることができませんでした.」
と表示され計算できません。
Fcを変更しただけなのに…、エラーの原因がわからず苦労したので知見を共有したいと思います。

エラーが発生したデータ(項目の確認)

InputUnit N m #入力単位
OutputUnit kN m #出力単位
<
<MN_TEST
Material STEEL E 2.050000E+011 G 7.900000E+010 #鉄筋の材料特性
NonLinearProperty SD345 Online Skeleton 3.4500E+008*1.1 0.001 BaseDF 0 #鉄筋の非線形特性
<
Material Fc24 E 2.266895E+010 G 9.445394E+009 #コンクリートの材料特性
NonLinearProperty Fc24 NewRCModel Strength 2.4000000E+007 Strain 2.0737310E-003 A 2.02462200 D 1.08885040 OriginOrienting #コンクリートの非線形特性
<
Section C32 Rectangle Fc24 H 3.200 B 3.200 #コンクリート断面
Section D25 Numerical STEEL AX 5.070/10^4 #鉄筋D25の断面
SegmentProperty C32 C32 Fc24 #セグメントの定義(コンクリート)
SegmentProperty D25 D25 SD345 #セグメントの定義(鉄筋)
<
FiberSection C32 BaseDFStrainTension 0.01 BaseDFStrainCompression 0.003 #ファイバー断面の定義/塑性率基点引張ひずみ/塑性率基点圧縮ひずみ
DivideLog C32 NY 32 NZ 32 #ファイバー断面の分割方法(対数分割)
RebarRectangle D25 NY 16 NZ 16 WY 3.0 WZ 3.0 # ファイバー断面の鉄筋配置
<
# 解析指定
Analysis FiberSection #ファイバー断?のM-N 相関耐?曲線の定義
FiberSection C32 #計算するファイバー断面
NumberDivide 16 100 #<引張側分割数>―<圧縮側分割数>
IncrementalForce Moment 1000 ForceT 1000 ForceC 1000 #1stepの増分応力

RESP-F3Tの計算方法

F3TのM-N 相関耐⼒曲線の求め方は以下の通りです。

① IncrementalForceで設定されているモーメント、軸力を増分応力として荷重増分法を用いて基準値を超える点をプロットする。
② ①の増分を基準増分としてY軸となす角度をNumberDivideで設定した分割数/4で等分割した増分割合を求める。
③ それぞれの増分割合応力で荷重増分法を用いて基準値を超える点をプロットする。
④ この時、荷重増分は100000stepが上限となる。

図化すると、こんな感じです。

エラーの原因

今回、Fc21で流れた解析がFc24に変更してエラーとなったの原因は、IncrementalForceで設定するモーメント・軸力はInputUnitに関係なく1000N・m、1000Nであり、断面が大きいため上限100000stepでは基準値を超えなかったためと考えられます。logファイルには残りませんが画面でstep数を確認できます。

また、FiberSection のDivideLogは少ない分割数で重要な端部分だけ細かくしたいという意図の分割で、DivideEquallyのほうが詳細な計算になります。

終局と許容

耐⼒曲線を求めるには、変形が終局に達したかどうかの判定が重要になります。本計算では、終局かどうかの判定は指定したひずみまたは塑性率が基準値を超えるかどうかで判断していますので、設定次第では終局耐⼒と許容応⼒の両⽅の耐力曲線を求めることができます。

①終局(ひずみ制限値を使用)

ひずみ制限値(BaseDfStrainTension/塑性率基点引張ひずみ、BaseDfStrainCompression/塑性率基点圧縮ひずみ)に、終局と定義する縁ひずみ(今回は引張0.01、圧縮0.003)を設定します。セグメントの塑性率基準(NonLinearPropertyのBaseDF)をゼロとして塑性率の計算を無効にすると、終局耐⼒が求められます。

塑性率基点ひずみの⼀般的な数値として、圧縮側はコンクリートの終局ひずみ0.003を設定していますが、引張側は鉄筋で決め、全断面降伏を終局としたいので、降伏歪より十分大きな歪0.01を設定しました。この設定により、全引張時の計算が成り立ちます。

②許容(塑性率を使用)

ひずみ制限値の引張圧縮ともにゼロを設定し、セグメントの塑性率基点を許容応⼒
度に設定すれば許容応⼒による値が求められます。

例えばコンクリートのNonLinearProperty で Online を指定し、引張側・圧縮側で異なるSkeletonを設定します。この時<正側折点⾼さ1>に引張許容応力度(圧縮側の1/1000程度の小さな値)をセットしてBaseDFを0、<負側折点⾼さ1>に圧縮許容応力度をセットしてBaseDFを1と設定します。鉄筋のNonLinearProperty でもOnline を指定し、引張側Skeleton<正側折点⾼さ1>に引張許容応力度をセットしてBaseDFを1と設定することで(圧縮側はコンクリートで決まるので省略)、圧縮側はコンクリート、引張側は鉄筋の許容応力度に達することで「塑性率1」の認識になります。

MN耐力曲線

上記をふまえて、終局、短期、長期のMN耐力曲線を計算させて、last.csvファイルに出力される値を用いてExcelで図化した結果を以下に示します。

採用したデータ

InputUnit N m
OutputUnit kN m
<
<MN_TEST
Material STEEL E 2.050000E+011 G 7.900000E+010
NonLinearProperty SD345 Online Skeleton 3.4500E+008*1.1 0.001 BaseDF 0 #終局
<NonLinearProperty SD345 Online Skeleton 3.4500E+008 0.001 BaseDF 1 #短期
<NonLinearProperty SD345 Online Skeleton 3.4500E+008*2/3 0.001 BaseDF 1 #長期
<
Material Fc24 E 2.266895E+010 G 9.445394E+009
NonLinearProperty Fc24 NewRCModel Strength 2.4000000E+007 Strain 2.0737310E-003 A 2.02462200 D 1.08885040 OriginOrienting #終局
<NonLinearProperty Fc24 Online Skeleton 1.00E+001 0.001 BaseDF 0 Skeleton 2.4000000E+007*2/3 0.001 BaseDF 1 #短期
<NonLinearProperty Fc24 Online Skeleton 1.00E+001 0.001 BaseDF 0 Skeleton 2.4000000E+007*1/3 0.001 BaseDF 1 #長期<
<
Section C32 Rectangle Fc24 H 3.200 B 3.200
Section D25 Numerical STEEL AX 5.070/10^4
SegmentProperty C32 C32 Fc24
SegmentProperty D25 D25 SD345
<
FiberSection C32 BaseDFStrainTension 0.01 BaseDFStrainCompression 0.003 #終局
<FiberSection C32 BaseDFStrainTension 0 BaseDFStrainCompression 0 #短期・長期
DivideLog C32 NY 32 NZ 32
RebarRectangle D25 NY 16 NZ 16 WY 3.0 WZ 3.0 #
<
# 解析指定
Analysis FiberSection
FiberSection C32
NumberDivide 8 32 #解析時間がかかるので値を調整
Theta 90
IncrementalForce Moment 100000 ForceT 100000 ForceC 100000 #100倍の値を設定

まとめ

F3Tファイバー断⾯のM-N 相関耐⼒曲線を使用する場合は、画面表示されるログを確認しながら、以下の点に留意してご利用ください。

① 断面サイズ・形状によって100000stepを超えていそうな場合はIncrementalForceにて増分応力を大きくする。
② プロットされるポイントが均等でない場合はIncrementalForceの曲げ・軸の応力割合を変化させて、基準増分割合を移動させる。
③ NumberDivide:分割数は4の倍数が良い。
④ 解析時間が長い場合、分割数(NumberDivide)を少なくする。または増分応力(IncrementalForce)を大きくする。
⑤ 上限stepに達していなさそうなのに、エラーになる場合、圧縮側・引張側どちらで計算が止まっているかを確認して、FiberSection のBaseDFStrainTension/ BaseDFStrainCompression、または NonLinearProperty のBaseDFを確認する。

内部でどのような解析を行っているのかを知ることで、エラー回避に役立てることができると思います。

 

 

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