RESP-Dを操作したり、RESP-Dのオンラインマニュアルを見ていたりすると、一本の部材に着目してもいろいろな”長さ”や”位置”に関する用語が登場します。同一のものが違う表現で記述されているだけだったり、表現が似ていても全く別物だったりする長さ・位置関係の用語について、基本的な内容を図解しました。図面の寸法と解析モデル上の寸法の扱いの関係性を理解をする一助にもなれば幸いです。
本記事では一般的なRC造の大梁に着目します。
長さは3種類ある
長さや部材内の位置を表す単語について、大きく3つにグルーピングすることができます。長い方から、”節点間距離”、”可とう長さ”、”内法長さ”。これらを軸組図とモデルのイメージ図を使っておさらいしていきます。節点間距離
構造計算ソフト内のモデルは節点と要素からなります。モデルにおける梁要素の端から端、一方の節点からもう一方の節点までの距離が”節点間距離”です。
節点間距離は、後述する他の長さの基本となり、この値から諸々の値を引き算することで 可とう長さや内法長さが決まってくる、一番長い(大きい)寸法です。RESPのモデルでは、大梁は節点から節点までの長さを持った剛域付き梁要素にモデル化されます。
図面との対応関係を考えると、図に示す通り芯~通り芯の長さとなるので、"柱スパン"ということにもなります。
RESP-Dでは、X方向・Y方向の軸スパンを変更する操作や、節点の位置を直接変更したりする操作によって、節点間距離の値が変わります。
内法長さ
説明の都合で、一番短い”内法長さ”を次に説明します。大梁の内法長さの基本は、接続している一方の柱の面(つら、フェイス)からもう一方の柱の面までの長さです。※1
設計時は、梁端部が曲げ破壊となるように設計すると思いますが、上記の柱の面の位置は”応力評価をする位置”となることが多いです。同時に、塑性化後にヒンジとなる位置とも言えるので、この位置を”(塑性)ヒンジ位置”と表現することもあります。RESP-Dの画面の中では、"危険断面位置"と表示しています。
応力分布が変わらずとも、危険断面位置が変わることで評価する応力の値が変わることになります。図のような逆対称曲げ応力が発生している場合には、梁の中央に近い位置を危険断面位置に設定するほど評価対象の応力が小さく、梁の端部に近い位置を”危険断面位置”に設定するほど応力が大きくなることがわかるかと思います。
上記の説明や図に記載の通り、節点間距離から、接続している柱幅の半分を差し引いた値になります。よって、スパン(節点間距離)が同一でも、大梁が接続している両端の柱の幅が変われば、内法長さは変化します。
※1:袖壁等が取り付くと、内法長さは変化します。また、塑性ヒンジ位置を梁の中央側へずらすような工法も開発されています。
RESP-Dでは、着目する大梁周りの部材の取り付き方から自動で計算を行いますが、先述した内容も踏まえ、設計者がどの位置の応力に着目するかを変更することも可能です。具体的には、大梁の両端のプロパティ”危険断面位置”として設定します。RESP-Dのメイン画面で大梁を選択し、右側に表示されるプロパティウィンドウの内容を書き換えると設定され、この内容が自動計算よりも優先されて用いられます。
可とう長さ
先述の2つのどちらにも該当しない”可とう長さ”。特に内法長さとどう違うかご確認ください。
大梁のうち実際にたわんで変形が生じる範囲の長さが”可とう長さ※2”です。RC規準では、可とう長さの端部は、フェイス位置から接合部内側に梁せいの1/4内側に入った位置です。これは同時に、梁の両側にある剛域端から剛域端までの距離とも表現できます。
可とう長さが変化すると、梁の曲げ剛性※2が変化することになります。他の大梁と比較して極端に可とう長さが短くなると、その梁に応力が集中してせん断破壊しやすくなってしまう(いわゆる、短スパン梁の破壊)が発生しやすくなるので、注意が必要です。
内法長さ(危険断面位置)の項で記載したのと同様に、RESP-Dでは、大梁端部の一つひとつに対して部材のプロパティウィンドウから"剛域長"を個別に設定することが可能です。なお、危険断面位置が剛域の内側となるように個別指定した場合には、警告を表示したうえで、危険断面位置は剛域端となるように設定し直します。
※2:厳密には、曲げ剛性・せん断剛性を計算する際の可とう長さに、本項で記述した可とう長さを用います。剛域による変形の拘束は部材の軸方向では考慮せず、軸剛性を計算する際の可とう長さは"節点間距離"が採用されます。
まとめ
以上をまとめると、以下の通りとなります。
| 相対的な 長さ |
同じ"長さ"を指す用語群 / "位置" |
RESP-Dで関係する操作 |
|---|---|---|
| ①長い | 節点間距離、梁要素長さ、柱スパン / 通り芯 |
・階・軸の設定 ・節点の移動 |
| ②中間 | 可とう長さ※、(剛域を除いた)梁要素長さ / 剛域端 |
・大梁の部材せい ・大梁の部材プロパティ(剛域長) ※①③からも変わる |
| ③短い | 内法長さ / 危険断面位置、応力評価位置、塑性ヒンジ位置、フェイス位置 |
・(両側の)柱の部材幅 ・大梁の部材プロパティ(危険断面位置) ※①からも変わる |