2024年 夏季インターンシップ

表題の通り、2024年の夏季インターンシップが9月で終了しました。 これまでも会社としてインターンシップは行っていましたが、私たちの部門としての募集内容は構造解析コンサルティング業務にフォーカスしたものだけでした。今年は初めて、主に開発業務にフォーカスした募集も実施しました。結果として、4名の学生に参加していただけました。 今季のインターンシップは既に終了していますが、参考のため募集案内を下記します。 今回はインターンシップの内容と、参加者の成果物を簡単に報告したいと思います。

今回の課題

今回のインターンシップでは、以下の課題に取り組んでいただきました。
「建築構造力学」に関するアプリケーション実装を計画し、自身で説明し、アプリを完成まで作り切る。
インターンシップの期間は2週間しかありません。その中で作り切れるであろうものを自分で企画して、プレゼンテーションして、最後完成披露する、という一連の流れを行っていただきました。 テーマを決めるうえでは、いきなりアイディアを出すのは難しいため、なかなか思いつかなければ以下のブログ記事などを参考にアレンジするか、計算内容は簡単だけれども需要が多いツール、たとえば断面性能計算ツールもいいのではないか、ということをお伝えしました。

タイムスケジュール

タイムスケジュールは以下のように進めました。 なお、所員の関わりかたとしては、「自分自身で考えて模索する」ことがメインで、基本的なプログラミングスキルは自分で学習してもらい、実現に向けてフォローする というスタンスで実施しています。
flowchart TD a(インターン内容説明 <初日>) -- 作りたいものを考える --> b(要件定義レビュー <第1週水曜午前>) b -- プログラムを作り始める --> c(中間報告レビュー<第1週金曜日>) c -- フィードバックを反映してプログラム修正 --> d(報告会前レビュー<第2週水曜日>) d -- 最終調整/プレゼン資料作成 --> e(成果報告会<第2週木曜日>)

参加者の成果

ここからは、各参加者の成果概要を挙げていきます。結果として、それぞれ全然違う方向の取り組みになったのが面白かったです。 結果的に、全員がPythonを用いた実装を選択しました。特にPythonを推しているわけでもないのですが、紹介したブログ記事がPythonで書かれているものばかりであることからそうなったものと思います。 実際、参考に出来る情報の多さから、もし慣れている言語がないのであれば短い期間で成果を出すには適した言語だと思います。 なお、今回の参加者はいずれの方も、Pythonは少し触ったことがある程度で他の言語はFORTRANくらいしか触ったことがない、という程度でしたので、言語仕様や構文も学びつつ、きっちり成果を出してきたことになります。

画像認識による断面性能計算ツール

一人目の参加者は、「画像認識により断面性能を計算するツール」を実装しました。 「断面性能の計算ツール」という案をベースに、自分なりのオリジナリティを加えた提案をしてくれました。画像認識処理をやったことがあるのかと思いきや、特になかったそうで、素晴らしいチャレンジ精神だなと感心しました。
単純に実装するだけでなく、精度検証のプロセスも優れていました。以下のような気付きがあり、聞いていてとても面白かったです。
  • 円形だとピクセルから計算しているため滑らかにならずに誤差がでる
  • 矩形の場合は1ピクセル分のBD^3/12も加算すれば誤差なく求まる
  • ひし形は正方形を45°に傾けた画像を認識させるよりもピクセルで完全に表現できる正方形のまま画像認識し、指定により計算上45°傾けることで誤差なく算出できる
オリジナリティあふれるアプリケーションであったことから、最後の評価会でも、所員からの質問が集中しました。すぐ使ってみたいという人や、実は実務で必要になり、過去に同じようなツールを作ったことがあるというベテランもいました。短い期間で非常に実践的なツールを作れた好例だと感じました。

質点系地震応答アニメーション可視化ツール

つづいては、「質点系地震応答アニメーション可視化ツール」です。 ブログ記事の質点系振動解析プログラムを元にして、その結果をアニメーションとして可視化するツールを作成してくれました。 実務でも、計算処理のプログラムはあっても可視化機能がないと評価が難しかったり間違いに気づきにくかったりするため、非常に重要な着眼点だと思います。
今回の参加者の中では、もっとも「ユーザー目線」を意識したプレゼンテーションでした。どのようなユーザーが、どううれしくなるのかという視点から作成するアプリケーションを企画し、説明してくれました。プログラムを組んでいると視野が狭くなりがちですので、そのような視点を学生時点で持てていることは非常に強みになるなと感じました。

FORTRAN 3次元FEMコードのPythonへの移植とプリポストツールの開発

3人目の方のテーマは、「3次元FEMコードの移植とプリポストツールの開発」でした。 自身が研究の中でFORTRANにより実装している3次元FEMのコードをPythonに移植し、入力用のGUIとモデル図や変形図などの可視化機能を実装してくれました。 オブジェクト指向を学ぶのも自身のテーマとして持っていたようで、モデル設計についても熟慮していました。
もともとのFEMのコードは自身で書いたコードであり知り尽くしているため、計算部分のPythonへの移植は驚くほどさくっと終わらせてきました。FORTRANのコードとPythonのコードはかなり趣が違うため、右から左にコピーでは当然移植はできません。それでいてこのスピード感、順応性の高さを感じました。FORTRANの良さを再認識しつつ、可視化などFORTRANが不得意なところでPythonを併用するという各言語の使い分けを理解したようで、さっそく研究でもPythonを取り入れたとのことでした。数値計算に対する探究心が強く、チームメンバーとも非常に議論が盛り上がっていたのが印象的でした。

等価線形化法による応答評価ツール

最後の参加者の方は、「等価線形化法による応答評価ツール」を実装しました。 入力・計算・出力それぞれほどほどにやるべきことがあり、私たちのチームによくマッチしたテーマを選択したと思います。
実はこの参加者の方は、大学の関係で1週間(祝日があったので実際は4日)しか作業日がありませんでした。その中で、スケジュールは圧縮しつつも、内容は同じ課題に取り組んでいただいたので、かなり時間とプレッシャーに追われていたと思います。 にもかかわらず、テーマ的にはそれなりに難易度が高いテーマを選択して取り組んでくれました。テーマ設定を聞いたときには、正直期限内にまともなものを作るのはかなり難しいのではと感じましたが、予想を超えてきてくれました。 結果として、最初の企画プレゼンテーションやアプリケーション全体としての完成度は全参加者の中でもトップだったのではないかなと思います。

最後に

私たちにとっても初めての試みでしたが、インターンの皆さんもプレッシャーを感じながらもいい学びがあったようで、実りの多いインターンシップでした。 今回参加してくれた方はあくまで建築構造に関わる学生が対象であり情報工学の専攻ではないため、プログラミングに関するスキルは決して高くないところからのスタートでした。 にもかかわらず、課題に対する理解力や対応力は皆さん想像以上で、非常に優秀な方が応募してくれたんだなぁとうれしかったです。 なお、参加者の方々と話して聞いたところ、このインターンシップは他の企業に比べて募集時期も早く募集期間も短いため見逃しやすいそうです。参加を希望する学生の方は、募集時期にご注意いただければと思います。 (今年のインターンシップ募集の掲載開始日が2024年05月31日、募集は7月1日(月)まででした。) 最後にインターンシップ終了時に参加者の方が送ってくれたメッセージを参考のため載せておきます。雰囲気が伝わるのではないかと思います。
2週間お忙しい中受け入れてくださり、ありがとうございました!!
毎日とても充実していて短かったように感じています。
皆さんが温かく、また優しく教えてくださり、まだまだ改良点はあるものの成果としてアプリを作りきることができました。ありがとうございました。 コードを持ち帰れせていただき、もう少し改善してみることにしたので完成したらまた報告させていただきます!!
またご一緒できるように頑張ります!!短い間でしたがお世話になりました。ありがとうございました!!!
2週間という短い期間ではありましたが、貴重な経験をさせていただき、心から感謝申し上げます。毎日が非常に充実しており、あっという間に感じました。
皆様の温かいご指導と親切なサポートにより、多くのことを学ぶことができました。インターンシップを通じて、多くの大切な思い出ができ、アニメーション制作にも挑戦できるとは思わなかったです。この機会を得て、KKEでのインターンシップに参加できたことは、大変有意義だったと感じています。
インターンシップとしては2週間は長い期間と思っていましたが,参加してみるとすぐにたってしまいました。
この短い期間でしたが,部の皆様にご協力いただき成果を完成させることができました。
特に今回のテーマに参加したことで,研究室ではわからなかったりできなかったりする
プログラミングのお話を伺うことができました。
特に村木さんには,答えのない話に付き合っていただきましたこと感謝申し上げます。
得れたものを有意義にするために,今後の活動に反映させていきたいと思います。
大変短い期間でありご迷惑をおかけすることも多くあったと思いますが、快く受け入れてくださりありがとうございました。
皆様お忙しい中私の初歩的な問題にも解決に尽力いただき感謝申し上げます。
皆様のおかげで成果物を完成させることができました。
4日間大変お世話になりました。

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