何となく意味は知っているけども・・・

振動解析プログラムを動かしていて「刺激係数」という値は知っていても、どういう値なのかわかりづらいなどありませんでしょうか。

ネットで調べても、何やらそのモードの影響度合いを表しているなどの説明がヒットするのですが、何に対する影響度合いなのかなどいまいちピンとこないようなものではないでしょうか。なんだか符号が正だった負にだったりするし、立体解析の場合は自由度ごとに出ています。

もちろん最初から本質を理解した聡明な方もいらっしゃると思いますが、私がプログラムを開発していく中で刺激係数をこう見たら面白いと思ったことを何回かに分けて記載してみます。今回は刺激係数自体の基本的な話となります。

刺激係数の求め方

まずは刺激係数の求め方を調べてみます。振動論の本などを読むと刺激係数の求める時に以下の式が書いてあります。

$$_{s} \alpha = \frac{ _{s} \lbrace u \rbrace^T [M] \lbrace w \rbrace }{ _{s} \lbrace u \rbrace^T [M] _{s} \lbrace u \rbrace }  \tag{1}$$

\( _{s} \lbrace u \rbrace \\\) はs次の固有ベクトル、\( [M] \\\)は質量マトリクスです。
これだけでは何を言っているかわかりませんが、これは次のように導出するものとなっています。ある任意のベクトルwがあり、それが固有ベクトルの線形結合で表せる場合を考えます。

$$ \lbrace w \rbrace = _{1} \alpha ・ _{1} \lbrace u \rbrace + _{2} \alpha ・ _{2} \lbrace u \rbrace + \cdots + _{N} \alpha ・ _{N} \lbrace u \rbrace \tag{2}$$

振動の一般化固有値問題の固有ベクトルには直交性という性質があり、異なる次数の固有ベクトルを質量マトリクスの前後からかけると0になるという性質があります。

$$ _{i} \lbrace u \rbrace^T [M] _{j} \lbrace u \rbrace = 0 \hspace{10pt} (i \neq j )\tag{3}$$

つまり(2)に左から \( _{s} \lbrace u \rbrace^T [M] \\\) を掛けると固有ベクトルの直交性からs次以外のモードの項がすべて消えて、両辺を \( _{s} \lbrace u \rbrace^T [M] _{s} \lbrace u \rbrace \\\)で割ると式(1)となります。例えば、1次モードの場合は次の様になります。

\( \hspace{25pt} _{1} \lbrace u \rbrace^T [M] \lbrace w \rbrace \\\
\hspace{10pt} = \underline{ _{1} \alpha ・ _{1} \lbrace u \rbrace^T [M] _{1} \lbrace u \rbrace }+ _{2} \alpha ・ _{1} \lbrace u \rbrace^T [M] _{2} \lbrace u \rbrace + \cdots +
_{N} \alpha・ _{1} \lbrace u \rbrace^T [M] _{N} \lbrace u \rbrace
\\\)

$$
_{1} \lbrace u \rbrace^T [M] \lbrace w \rbrace = \underline{ _{1} \alpha ・ _{1} \lbrace u \rbrace^T [M] _{1} \lbrace u \rbrace } \tag{4}
$$

$$
_{1} \alpha
=
\frac{ _{1} \lbrace u \rbrace^T [M] \lbrace w \rbrace }
{ _{1} \lbrace u \rbrace^T [M] _{1} \lbrace u \rbrace }
\tag{5}$$

これは展開定理と呼ばれています。
次に、刺激係数とは(1)を使って外力分布ベクトルと呼ばれるベクトルを固有ベクトルの線形結合に分解した時の係数 \( \beta \\\) のことを指しています。

$$ \lbrace 1 \rbrace = _{1} \beta ・ _{1} \lbrace u \rbrace + _{2} \beta ・ _{2} \lbrace u \rbrace + \cdots + _{N} \beta ・ _{N} \lbrace u \rbrace \tag{6}$$

\( \lbrace 1 \rbrace \\\) は外力分布ベクトルです。 ※なぜ1という数字なのかは後ほどわかります。
この各項の固有ベクトルを刺激係数でスカラー倍したものは刺激関数と呼ばれます。つまり全ての次数の刺激関数を足し合わせると外力分布ベクトルとなることを表しています。

外力分布ベクトルって?

外力分布ベクトルの説明について、まず振動方程式を思い浮かべてください。※ここからはベクトルなのかスカラーなのかが重要になってくるので意識して見てください。

$$ [M] \ddot{ \lbrace x \rbrace} + [C] \dot{\lbrace x \rbrace} + [K] \lbrace x \rbrace = [M] \ddot{ \lbrace x_0 \rbrace } \tag{7}$$

ある時刻歴の地表面に加速度 \( \ddot{ x_0 } \\\) が発生したとして、振動解析はその加速度がすべての質量に作用すると考えます。その時に各質量に作用させるために用いるのが外力分布ベクトルとなります。こう考えると言葉の意味とも整合性が取れます。
質量がマトリクスで表現されているので、スカラー値の \( \ddot{ x_0 } \\\) をベクトルにする役割があります。例えば、3質点系モデルで(7)の右辺を詳細に書くと(8)となります。

$$
\left(\begin{array}{ccc} { m_{1} } & { 0.0 } & { 0.0 } \\\
{ 0.0 } & { m_{2} } & { 0.0 } \\\
{ 0.0 } & { 0.0 } & { m_{3} } \end{array}\right)
\color{red}{ \left\{\begin{array}{c} { {\ddot{ x_0 }} } \\\ { {\ddot{ x_0 }} } \\\ { {\ddot{ x_0 }} }\end{array}\right\} }=
\left(\begin{array}{ccc} { m_{1} } & { 0.0 } & { 0.0 } \\\
{ 0.0 } & { m_{2} } & { 0.0 } \\\
{ 0.0 } & { 0.0 } & { m_{3} } \end{array}\right)
\times
\color{red}{{\ddot{ x_0 }}}
\color{red}{\times}
\color{red}{\left\{
\begin{array}{c}
{ 1 } \\\
{ 1 } \\\
{ 1 }
\end{array}
\right\}}
\tag{8}$$

このすべてが1となっているベクトルが外力分布ベクトルです。※先ほど、ベクトルを1で表現したのはこのためです
刺激係数の絶対値が大きければそのモードが振動系に与える影響が大きいというのは、地表面の加速度を各質量に分配する外力分布ベクトルを、固有ベクトルを使って表した時の係数というところからきています。

方向別の外力分布ベクトル

串団子の質点系モデルでは全体の自由度が1方向しかないので、すべてが1となるベクトルですが、立体振動解析ではXYZの3方向に地震波がわかれています。例えば、2節点で各節点の自由度が XYZ方向の振動解析の場合、(7)の右辺側は次のようになります。

$$
M
\left\{\begin{array}{c}
{ {\ddot{ x_0 }} } \\\ { {\ddot{ y_0 }} } \\\ { {\ddot{ z_0 }} } \\\ { {\ddot{ x_0 }} } \\\ { {\ddot{ y_0 }} } \\\ { {\ddot{ z_0 }} }
\end{array}\right\} =
M
\times
{\ddot{ x_0 }}
\times
\left\{\begin{array}{c}
{ 1 } \\\ { 0 } \\\ { 0 } \\\ { 1 } \\\ { 0 } \\\ { 0 }
\end{array}\right\} +
M
\times
{\ddot{ y_0 }}
\times
\left\{\begin{array}{c}
{ 0 } \\\ { 1 } \\\ { 0 } \\\ { 0 } \\\ { 1 } \\\ { 0 }
\end{array}\right\} +
M
\times
{\ddot{ z_0 }}
\times
\left\{\begin{array}{c}
{ 0 } \\\ { 0 } \\\ { 1 } \\\ { 0 } \\\ { 0 } \\\ { 1 }
\end{array}\right\}
\tag{9}
$$

$$
M =
\left(\begin{array}{ccc} { m_{1} } & { 0.0 } & { 0.0 } & { 0.0 } & { 0.0 } & { 0.0 } \\\
{ 0.0 } & { m_{1} } & { 0.0 } & { 0.0 } & { 0.0 } & { 0.0 } \\\
{ 0.0 } & { 0.0 } & { m_{1} } & { 0.0 } & { 0.0 } & { 0.0 } \\\
{ 0.0 } & { 0.0 } & { 0.0 } & { m_{2} } & { 0.0 } & { 0.0 } \\\
{ 0.0 } & { 0.0 } & { 0.0 } & { 0.0 } & { m_{2} } & { 0.0 } \\\
{ 0.0 } & { 0.0 } & { 0.0 } & { 0.0 } & { 0.0 } & { m_{2} } \end{array}\right)
\tag{10}$$

\( \ddot{ x_0 } \\\) を係数に持つベクトルがX方向の外力分布ベクトルとなります。つまり、立体振動解析の場合、ある自由度に着目して、その自由度に関する項だけ1.0が入ったベクトルがその方向の外力分布ベクトルとなります。これが立体振動解析では刺激係数が方向毎に分かれている理由です。

閑話 ー 英語で言うと

刺激係数は英語で考えた方が意味が分かりやすいということをご存じでしょうか。刺激係数は英語で「Participation Factor」となります。先ほどの足し合わせて外力分布ベクトルを作る時の各固有ベクトル(部分)に対する度合い(係数)と読み解くとわかりやすいではないでしょうか。意味が分かってくると「刺激」という言葉でも、「まぁ確かに・・・」とはなりますが少しわかりづらい気がします。

まとめ

刺激係数は各モードの影響度合いということでしたが、外力分布ベクトルを構成する時の影響度合いというところまで考えると本質が見えてくるのではないでしょうか。しかし、影響度合いではあるのですが、刺激係数の絶対値を見るだけでは実は観察が不足しています。そのキーとなるのは「固有ベクトルの基準化」にあります。次回は刺激係数の見方で注意しなければならないことや刺激係数を図解してみることにします。

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