付加曲げで柱モーメントが増加する
ある物件で免震部材の付加曲げモーメントを節点荷重で入力しました。
以下の図に示すように、モーメントの向きからすると大梁のモーメントは増加し、柱モーメントは減少するという考え方が一般論としてあります。そのため、大梁については設計応力に加味する必要がありますが、柱についてはモーメントは減少する方向なので、特に考慮しなくて良い、ということも言われています。
ですが、今回の検討結果では、一部の柱において逆にモーメントが増加するという現象が起きました。
以下は再現した簡単な例題です。
免震部材は以下のように配置されています。X3通りのSSRは滑り支承、他の支承材は天然ゴム系積層ゴムです。
着目している軸組は、Y2通りです。
1FL側(免震層上側)の付加モーメントを着目しているY2通りに関する付加モーメントをP-δ、Q-hモーメントそれぞれについて示すと、以下のとおりです。X3通り滑り支承は、下側がすべり面のためP-δモーメントは0となっています。
階 | X軸 | Y軸 | P-δモーメント(kNm) | Q-hモーメント(kNm) |
1F | Y2 | X1 | 97 | 335 |
1F | Y2 | X2 | 439 | 378 |
1F | Y2 | X3 | 0 | 115 |
1F | Y2 | X4 | 495 | 378 |
1F | Y2 | X5 | 600 | 335 |
付加モーメントなしの応力図と付加モーメントありの応力図を示します。
赤枠部分が柱のモーメントですが、付加モーメントを考慮するとモーメントが増えています。
付加モーメントなし
付加モーメントあり
皆さんはすぐに理由がわかるでしょうか。
解説は↓に記載します。
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答え:柱のモーメントは、直下の節点の付加モーメントだけでなく、両隣の節点の付加モーメントの影響も受ける
ということが原因でした。
実際、着目している柱直下の節点の付加モーメントのみ載荷した場合、柱のモーメントは想定通り減少します。
ところが、試しに左隣の節点だけに付加モーメントをかけると、着目している柱のモーメントが増加しました。
つまり、以下のような状況でした。
- 隣接する節点の付加モーメントにより大梁が変形してモーメントが増加する。
- 付加モーメントによって大梁のモーメントが増加すると、逆側端部モーメントも増加する。
- 逆側の端部に接続する柱もその影響を受け、モーメントが増加する。
結果的にわかったことですが、従来付加モーメントが隣接する支承材で大きく違わなければ、当該柱直下の付加モーメントの影響が大きいため予想通りの結果になるものの、今回の場合は当該柱下の支承材が滑り支承であり、付加モーメントが両隣に対して非常に小さいことが予測と違う結果をもたらしたと言えます。
実際の設計応力としてどう考えるかは設計者判断によるところがありますのでこの結果が必ずしも正とはいえないかもしれませんが、構造計算上はこのような現象が起こるというのは発見でした。
今後の設計においてなにか参考になりますと幸いです。
今回使用したソフト RESP-D