粘弾性ダンパーにおける振動解析時に計算が発散する問題
粘弾性ダンパーなど変位べき乗型、速度べき乗型(F=kxα, F=cvα,0<α<1)の特性を持つ部材は骨格曲線が上に凸の曲線になります。このような制振部材は、非常に小さい変形(速度)領域において接線勾配が極めて急で、変形(速度)が大きくなるにつれ接線勾配が小さくなります。そのため、振動解析を行う際、以下の粘弾性ダンパー部材の骨格曲線で示すように、初期のステップにおいては計算が1ステップ進むと大きな不釣合力が発生しやすくなります。
RESP-Dでは振動解析時に発生した不釣合い力を次ステップの外力として扱い、外力に加算します。不釣合い力が過大となった場合、その不釣合い力を周辺部材が負担することになるのですが、下図の例に示すように周辺部材の骨格曲線上に交点が求められず、計算が発散することになり、エラーが生じる場合があります。
そのため、このような特性を持ったダンパーを配置した際に計算が発散する場合は、各ステップの不釣合力を小さくすることを検討する必要があります。
不釣合い力を小さくする方法としては、積分時間間隔を細かくする以外に、ダンパーに硬すぎない適切な取付剛性を考慮する方法があります。実際のディテールを考慮するとダンパーと支持部材の間が完全に剛ということはないはずですので、適切な取付剛性の設定としてはこの影響を設計者判断により考慮するということになります。
ダンパーは以下に示すように、ばねkとダッシュポットcを直列に並べたマクスウェルモデルを用いてモデル化されます。
マクスウェルモデル
RESP-Dの仕様上、取付剛性を設定していない場合はばねを剛として扱うため、節点間の変位・速度がダッシュポットに直接作用する状態となっています。この状態では非常に大きい減衰係数に対して瞬間的に大きな速度が作用しやすく、発散が生じやすくなります。これに対して適切な取付剛性を設定することで、下図に示すように計算が発散しやすい微小変形(速度)領域ではばねの挙動が支配的となります。つまり、減衰係数が非常に大きい微小変形領域(速度)においてダッシュポットに速度が発生しにくい状況になり、結果的に発散が生じにくくなります。より大きな変形(速度)領域においては、ダッシュポットの挙動が支配的となることでダンパーが減衰力を発揮するような状態となり、発散せずに計算できるようになります。
RESP-Dでは下図に示すように、装置長さと支持柱符号(もしくは支持部断面積)を設定することで、取付剛性を設定できます。このとき、支持部の剛性は部材長からダンパーの長さを差し引いた長さから計算されます。
粘弾性ダンパーにおける振動解析を行う際、上記の点にご注意いただけると幸いです。